論説
"コンムニンフジ"の耳鼻咽喉科領域に於ける治療成績に就いて
高橋 正彌
1
1甲南 病院
pp.63-64
発行日 1948年5月1日
Published Date 1948/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200057
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プロントジールの出現により「ズルフアミン」系藥劑の研究は勃然として起り、體内殺菌劑の王者として治療界を風靡した。ペニシリンの發賣せられるに及んで「スルフアミン」劑への關心は稍々低下したるもののようであるが、其の卓効は依然として其の聲價を保持し、吾人日常の診察に於て不可缺の藥劑の一つたるは言ふまでもない。
然し乍ら「スルフアミン」劑と雖も一般の例に漏れずその使用が廣汎に且つ長年月に亘るにつれて余は奏効せざるか時には全然無効と思はれる例數も日毎にその數を増加するは醫家の經驗する所である。余は「スルフアミン」劑を好んで衝撃的に使用し專門の耳鼻咽喉科領域の治療に好成績を收めつゝあるが、それでも意に滿たざる症例にも尠からず當面する。此等に對しては時代の寵兒「ペニシリン」を試用せんとするもその入手難と高價のためその使用を制約せられ且その効果も必しも百發百中で無いとの報告あるに於ては我國の現状では普遍實用の域に達したとは言ひ難い。從つて「スルフアミン」劑無効の症例に對しては在來の諸療法を試みて滿足し或る程度拱手傍觀するの他なく、その都度多少とも新構想に由る治療法の出現を待望しありしところ、「コンムニンフジ」の發賣を知り、此を試用せるに刮目すべき成果を認めたるもの再三に止らないので、使用日淺く例數も少數であるが、記して諸賢の追試を乞ふ次第である。
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