耳鼻咽喉科領域に於ける新鎭痛劑"オートン"の使用經驗に就いて

　従来，鎭痛剤の代表として日常使用せられるモルヒネを始め，その大部分は卓効を奏するが，之等は麻藥に属し，複雑なる手続とその連用に依り最も忌むべき禁断現象と習慣作用を示し，ひいては種々の社会問題を惹起した。そこでかゝる欠点を補い，出来得れば更に強力な鎭痛作用を示す代用鎭痛剤の出現に藥学界の研究が進められて来た。ために今迄種々の鎭痛剤が発見され創製されて来た。最近英国に於てアミノブテンの系統に属する化合物に本作用を有する事が発見された。即ち本系統の製剤は鎭痛作用を呈すると同時に，今迄モルヒネグァレツペに見られた樣な胃腸障碍等の副作用なく，構造上からもそれらと類似性なく麻藥に属さないとされている。

　今回小野藥品工業株式会社では本系統より作られた新鎭痛剤"オートン"を創製したので，私は耳鼻咽喉科領域に於ける臨床実験を行い，ある程度の結果を得ましたので報告したいと思います。

　KAWASHIMA reports the efficacy of 'O- TON', a new drug used for analgesic, in the field of otolaryngology. It is effective in allaying symptoms of postoperative pain but, it has a tendency to lower the blood pressure, of alowing the pulse as well as respiration rate. Body temperature is little effected. For an adult the dose is 20mg while for children 10. It may be effective 10 minutes after its administration. Manifestation of drowsiness is its drawback and continued use will produce tolerance.