論説
本年度麻疹に併發せられたる耳鼻咽喉科疾患に就て—特に麻疹性中耳炎
名越 好右
1
1東京慈惠會醫科大學耳鼻咽喉科教室
pp.64-68
発行日 1948年5月1日
Published Date 1948/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200058
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1.緒言
麻疹に併發せられる耳鼻咽喉科疾患としては上氣道のカタル性變化アフタ性口内炎聽器疾患等廣範圍に亘るも就中麻疹性中耳炎は實に屡々見られるもので麻疹の際肺炎と共に最も厭む可き合併症とせられてゐる。然しながら19世紀末期トバイツ、ベツオルト、ルドルフ、ハーベルマン等により麻疹屍體剖檢の結果殆んど例外なく中耳に何等かの病變を認められてより漸く臨床的にも注目せられるに至れるもので臨床的に其の發現頻度は其の統計製作者により又製作年度により著しき相異があるがナドレツシニーが麻疹患者に就て全て耳鏡檢査せる結果によれば鼓膜上に何等かの病的變化を認めたものは59%急性化膿性中耳炎の所見を呈したるものは13.1%と言はれて居る。又麻疹性中耳炎の經過豫後に就ては第二次感染と見做される化膿性中耳炎も特異なものではなく、ガルダイナーは181例の麻疹中耳炎中5例のみが乳嘴突起炎を併發したと稱して居り、松井教授は鼓膜の穿孔大となり慢性に移行するものが尠くないが、骨を侵し乳嘴突起鑿開術を要するものは少いと述べて居る。然し乍らウルバンテイシユ、ケマツハは壞疽性變化を起すことありと述べ又聾を招來し或は頭蓋内合併症を續發する等重大なる結果を見る等重症の經過をとるものもあるは一般に認知せられて居る處である。
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