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海外トピツクス
pp.657-658
発行日 1956年9月1日
Published Date 1956/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201773
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胃膀胱の実験
膀胱腫瘍その他種々の下部尿路の疾患の際に屡々尿路の変更を余儀なくされる。今日迄尿路の代用として色々な方法が考案されたけれども,いずれの方法も一長一短がある。Sinaiko (1956)は腸管に比べ,胃粘膜からの吸収が少いのに注目して,胃を膀胱の代用に用いようと試みた。犬で胃の大轡の部分を切り離して,Heidenhainpouchを作り,これに尿管を植え,膀胱の代用とした。本来の胃は縫合すればその儘消化管の一部として役立つている。たゝてのpouchを作る部分が栄養障碍に陥らないために胃綱動脈から血液の供給をうけるようにする事が必要である。手術後15ヵ月に亙つて観察を続けたが,どの例でも血液化学的な異常が見られなかつた。尿を貯留しても胃粘膜からの分泌に変りがないが,何分粘膜がその儘残つているので,食事後又はヒスタミン注射後に多量の胃液が分泌され,pHも低下する。併し,これは寧ろ好都合の事であるように見受けられ,pHの変動が激しいために,細菌の繁殖が妨げられて,上行性感染を防ぐ結果となつた。どの例でも腎盂像に変化なく,腎盂腎炎及び水腎症の所見が認められなかつた。
この実験は単に犬に於ける実験的可能性を示しただけでなく,尿路変更に当つての二つの困難な問題──上行性感染及び腸管からの再吸収を解決するという点で特に興味深いものがある。
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