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泌尿器科領域に於けるトリプシン治験例に就いて
星野 英一
1
,
小川 英
1
,
国分 一朗
1
1横浜市立大学医学部泌尿器科教室
pp.327-330
発行日 1956年5月1日
Published Date 1956/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201688
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緒言
蛋白溶解酵素トリプシンの歴史を顧みると,劃期的な業績の一つとしてかのノーベル賞受賞者Northrop andKunitzによる純粋結晶としての抽出がある。この結晶化されたトリプシンは,1951年Roettigにより,初めて外科領域に於いて応用され,その卓効あることが認められた。爾来,枚挙に遑がない程多数の臨床治験の報告に接するが,泌尿器科領域に於いてはその報告がなく,私どもの知る限りでは僅に本年9月,ハンブルグのドイツ泌尿器科学会で,ゲツチンゲンのHashe und Trassが,Zur therapeutischen Verwendung tryptischer Fer-menten in der Urologieなる演説を行つた筈だという事のみである。わが泌尿器科領域に於ても,被苔,壊死組織が創面に介在し,治癒が遷延する様な症例に屡々遭遇するので,常々本剤を用いたいと思つていた所,偶々外来を訪れた一米人に持田製藥提供の製剤を使用し,その効顕著であつたので,以来,泌尿器科各種疾患40余例に用い,相当の新知見を得たので,この中,普遍的な疾患20余例を選び,茲に若干の考察を加え,その概要を報告する次第である。
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