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乳児湿疹に対するイプシロンの効果
藤野 文雄
1
1名古屋市立大学医学部皮膚科教室
pp.323-325
発行日 1956年5月1日
Published Date 1956/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201687
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乳児湿疹に対する治療法は,その症候的特徴である乳痂,脂漏等の程度に応じて,局所療法として亜鉛華オリーブ油,硼酸亜鉛華軟膏,石炭酸亜鉛華糊膏等の所謂対症療法が主体をなし,更にビタミンB2,B6,カルシウム剤の注射療法,最近に於てはA.C.T.H,コーチゾン等の応用と逐次進展,その効果の優越性も報告されるに至つたが,併し乍ら依然として難治症たるは免れ得ない所である。
イプシロン(ε-アミノカプロン酸)は,織維素融解現象を惹起する酵素であるプラスミンが血中で増加し,為に蛋白分解によつて生ずるポリペプチドの有毒作用が妊娠悪阻,妊娠中毒症,レントゲン宿酔を招来するとの考えから,プラスミンの活性化を抑制する事により該疾患を治癒せしめ得るであろうとの予想の下に,抗プラスミン剤として合成されたものである。尚プラスミンは1894年Dastreによつて注目せられ,更にLomis, McFarlane等によつてこの酵素が血清中より分離せられ.Plasmin或はFibrinolysinと名付けられたものである。今回第一製藥より抗プラスミン剤(イプシロン)の提供を受けたので,之を乳児湿疹に試用したので症例を追つてその効果を検討する事としたい。
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