特集 性病
妊婦梅毒について
澤崎 千秋
1
1東京大學醫學部産婦人科學教室
pp.602-608
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200847
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I.緒論
妊婦梅毒の研究は,吾國に於ては,個人を對象として各例については,勿論梅毒の研究に並行して行われて來たが,これを集團的に調査して,社會醫學的觀點より研究する機運は,ずつとおくれて,この戰時からはじまり,終戰後現在に至つて,ますますその重大性を加えつゝある。
というのは,妊婦が梅毒に罹かると,經胎盤感染によつて,胎兒が感染して,流産乃至早産若くは死産して生兒を得られないか,たとえ生産しても,病原體を既に體中にもつているので,先天梅毒兒として,體力的にも知力的にも暗い運命をたどることが知られているから,梅毒が人口の量及び質を低下させることが甚大であると考えられているためで,この理由によつて,職時中は直接に人的資源の改善の一方途とし,戰後は,この意味に更に人類の福社を増進することの大きな觀點からの意味もつけ加えて識者の視聽をあつむるに至つたのである。
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