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特集 産婦人科診療の今昔
産科学
妊婦梅毒
Syphilis in pregnant women
澤崎 千秋
1
,
中谷 昭文
1
Chiaki Sawazaki
1
1日本大学医学部産科婦人科学教室
pp.131-138
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202132
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Ⅰ.はじめに
梅毒の診断法と治療法の進歩発展は近時目覚しいものがあり,妊婦梅毒もこれに伴つて新しい分野を展開しつつある。妊婦梅毒が他の一般梅毒とちがう重要性としては,(1)胎児への影響即ち流早死産を防止し先天梅毒児の出生の危険を除くことに主目的をおき,(2)妊娠という限られた時期に有効な治療を必要とするが,(3)妊婦の特異性として使用薬剤の副作用が出現し易く,(4)最近の梅毒の一般傾向に伴つて陳旧性の所謂抗療性梅毒が増加していることが治療を困難にし,他方,(5)診断面では潜伏性無自覚の所謂不識梅毒の多い事と,(6)妊娠時の梅毒血清反応が非特異陽性を示す事があるために,診断をむずかしくしていることがあげられる。(6)に関しては,梅毒血清反応は,その鋭敏特異化を目的として現在,カルジオライピン系,梅毒トレポネーマ系の2つの反応系が創案研究されており,特に後者に属するT.P.I.Test 等により非特異反応の問題も解決への糸口を見出したと云えよう。
治療の動向としても駆梅剤は砒素剤,蒼鉛剤から更にすすんでペニシリン製剤が一応妊婦梅毒の治療の理念を満足するものとして汎用され,近来では広抗菌性の抗生剤の使用報告も増し,抗療性梅毒の治療にみるべき成果をおさめている。一方疫学的にも妊婦の検血による陽性率の年次的変化は終戦後の昭和25年頃をピークとして漸減傾向を示している。
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