講座
妊婦と新生児の梅毒
斉藤 正実
1
1関東逓信病院産婦人科
pp.32-36
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201316
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はしがき
606号或は66(ろくろく)といえば,素人でも良く知つている梅毒の治療薬で,このサルバルサンの効果は,聊か,迷信的ですらあります.妊婦からこんな質問を受けることはありませんか.「66という薬を注射しておくと,きれいな子供を産めるそうですが,ほんとですか.若しそうだつたら,注射していただけませんか.」梅毒でもないのに何を変なことを言いだすのだろう.さてはアナムネーゼでもあるんじやなかろうかと疑ぐつてみたくなります.私は,その必要のないこと,そして注射しても,きれいな赤んぼが生れるとは言えぬこと.そして,も一つ,あなたぐらいの美人から生れる子供はきつと美男子か美女だろうと,ひやかし半分のお世辞をつけ加えて帰すことにしています.
恐らく,昔々,サルバルサンが発見されたばかりの頃,そして,梅毒華かなりし頃,母子衛生——母子手帳なんて考えてみたこともなかつた頃,そのころは,梅毒血清反応も妊婦の大部分は受けていなかつたので,ともかく,サルバルサン注射しておけば,まともな赤んぼを産めるということになつていたのではなかつたのでしようか.
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