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紫斑症の病因論
Storck等はリウマチ性紫斑症の患者に細菌濾液の皮内注射を行つたところ,出血性遲發反應が現われることがあるのを見,出血性素因にアレルギーが關與することを知り,この方面の檢索を試みている。研究方法としては,①組織學的研究,②血液像ならびに凝固因子の檢査,③動物實驗による出血素因の檢索を行つた。文献上にてはアルツス現象の時には出血が時々見られるに反しシュワルツマン反應にては常に出血が現われる。組織像を見ると,アルツス現象の場合には結合組織の浮腫性變化,壞死,出血ならびに滲出性炎症性反應が現われ,シュワルツマン反應の場合には,毛細血管,靜脈の擴張,廣範圍の出血があるが,炎症性反應を見ず,ときに壞死,炎症性反應を見るのを特徴としているから,特異性感作反應のアルツス現象と非特異性變調性反應のシュワルツマン反應とは組織學的には區別出來ない。次に血液像並に血液凝固因子を檢し,アルツス現象にては惹起注射後トロンボチーテン,白血球は急速に減少し,次いで増加する,同時に血中のヘパリンは之と反對に先づ増加し,次いで減少する。シュワルツマン反應にてはトロンボチーテン,白血球の變動はアルツス現象と同樣であるが,それ以外にV因子の缺乏が見られる。アルツス現象でもシュワルツマン反應でも共に,病巣の大きさにより,これ等血液像,凝固因子の變化は時間的,量的差異を示すが,シュワルツマン反應に於けるV因子の缺乏は特有である。以上の如ぎ組織像,血液像,血液凝固因子の所見より出血素因を次の如く3群に分けている。第1群,出血性細菌疹(Mikrobide)は發作性に四肢伸側,臀部,側腹に黍粒乃至貨幣大の浸潤ある發疹が來るもので,發疹の中心部は時に滲出性となる。又該疾患は腸出血,關節痛を件う。これに屬するものはリユウマチ性紫斑,ヘノッホ腸性紫斑等である。本紫斑は感染病巣(扁桃腺炎,歯肉芽腫,中耳炎,慢性氣管炎,胃炎,腸炎等)がある時に來る。組織所見としては,眞皮の上中層の浮腫,小中血管の内皮の腫脹,所々に見られるフイブリノイド膨化,壞死,血管周圍性血球浸潤。これ等の断見は細菌性物質に對する出血性反應である。しかし細菌濾液による皮内反應には出血は見られない。これ等の結果よりMi-krobideの場合にはアルツス現象,シユワルツマン反應の両者の關與が考えられる。第2群はシュワルツマン反應型で,猩紅熱後に來る電撃性紫斑はこれで,V因子の缺乏が證明されて居る。肺炎球菌性敗血症の時に見られる急奔性紫斑におけるその組織像,急性經過,廣範圍な出血は,シユワルツマン反應に似ているが,V因子の缺乏はなく,トロンボナーテン減少が見られている。しかし皮膚のみならず内臓の組織像はシュワルツマン反應に似ている。第3群の二次性出血性皮膚疾患(出血性濕疹,蕁麻疹,發疹)の内,出血性濕疹は細菌性のもので,主として下肢に來る。組織學的には血管周圍性,時に苔癬樣の淋巴球浸潤,表皮の海綿状態が見られ,第1群に見られた白血球の浸潤はなく,シュワルツマン反應時に現われる擴張した血管よりの高度の出血もない。血液像,血液凝固因子には變化を見なく,又細菌濾液による皮内反應にて出血を見ない。誘因として血栓,静脈瘤,心臓衰弱,肝臓疾患が考えられている。なおシヤンバーク氏病,血管擴張性環状紫斑もこの群に屬している。今後更に血液凝固の微細な機序が判れば,第3群に屬する疾患の數は少なくなると考えられる。結論として細菌性物質が紫斑の成因上重要な役割を演じ,治療としては抗生物質,ワクチンが奨められる。
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