特集 呼吸器感染症診療の最前線—症例から学ぶエキスパートの視点
序文
迎 寛
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学分野(第二内科)
pp.156-157
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200342
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肺炎に代表される呼吸器感染症は,医学的にだけでなく社会的にも大きなインパクトを与えうる重要な疾患群である.2019年末,中国・武漢で発生し,瞬く間に世界中へと感染地域を拡げ,世の中を混乱に陥れた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,その影響の凄まじさを如実に物語っている.過去には,スペイン風邪で世界で多くの方が亡くなっているが,最近でもSARS,MERS,パンデミックインフルエンザ(H1N1)2009といった新興感染症による同様の騒乱があった.このような未知の感染症であったとしても,基本的にはわれわれが日常的に診療している,飛沫感染により伝播するウイルス性呼吸器感染症への対応と異なる点はさほど多いわけではない.呼吸器感染症に対する日頃の診療の質を高めることが,このような非常時の際にも冷静かつ正しい判断へと結びつくと思われる.
COVID-19に限らず肺炎の死亡率は現在高止まりしており,新規抗菌薬の開発が滞っている現代においては,今使える医療資源を最大限に有効活用しなければならないが,第一選択薬になるような抗菌薬の国内での欠乏も実際の現場では起こっている.さらに,薬剤耐性菌の蔓延は世界的な問題にもなっており,AMR対策の面からは,ただ単に目の前の患者を治すだけではなく,将来の患者が耐性菌で苦しむことがないように,抗菌薬の適正使用も重要な課題となっている.
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