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肺高血圧症の診療は,1999年のエポプロステノール発売以降次々と検査方法,新しい治療薬が開発され,進歩のスピードが加速されたと感じる.肺動脈性肺高血圧症の治療薬については作用機序の異なる3系統の薬,プロスタグランジン製剤ベラプロスト,エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン,PDE5阻害薬シルデナフィルが開発されたが,同様の機序を有し欠点を補った長時間型ベラプロスト,アンブリセンタン,タダラフィルが使用できるようになり,実に7種類の薬剤が存在している.これらの薬を使用して予後は格段に改善したが,最終的な転機が不良な患者さんが2,3割はあった.数年前から保険適応外で使用され,最近治験が終了した抗がん剤のイマチニブにこれを改善する期待がもたれている.慢性肺血栓塞栓症の治療は,内科的治療には限界があり,器質化した血栓を摘除する外科手術が基本であった.この血栓内膜摘除術は一般には難易度の高い特殊な手術とされるが,かなり末梢までの器質化血栓であっても処理できる世界的施設が日本にあることが意外に知られていない.また最近ではカテーテル治療が行われるようになり新しい治療として今後認知される可能性が出てきている.
今回の特集ではこれらの新しい治療の発展のうち,焦点を絞って各分野の専門家に概説をお願いした.新しい血管拡張薬の中ではエポプロステノールに次いで長期効果が期待されるPDE5阻害薬の効果の報告,小児に対する治療の進歩,イマチニブによる治療はどのように位置付けられるのか,新しい肺動脈性肺高血圧症治療薬の効果を予測することはできるのか,慢性肺血栓塞栓症に対する治療はどこまで行われるようになってきたのかについて最近の治験がコンパクトにまとめられ,最近の進歩を展望できると確信している.
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