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川崎富作先生による世界で最初の川崎病の原著論文が発表されたのは1967年である.川崎病は,出生数の減少にもかかわらず,近年増加しており2012年には患者数が1万人を超え,罹患率は過去最高となった.多くの内外の臨床家や研究者の努力により,川崎病の治療と管理は格段に進歩し,冠動脈後遺症の減少,軽症化,救命率の著しい改善という成果がもたらされてきた.しかし,川崎病が先進国においては後天性の心疾患の第1の原因であることに変わりはない.最近,成人の急性冠症候群のなかに川崎病に起因するものの報告が増加している.また,臨床の実際にあたっては,まだまだ未解決または不明の点が多く存在するのも事実である.
さて,本特集では,第一線の川崎病研究者により川崎病を急性期治療,心血管病変の診断,長期予後,カテーテル治療および成人急性冠症候群との関連について最新の知見を述べてもらった.本特集では,川崎病は小児の病気と限定せず長く成人期まで持続する疾患として捉えている.つまり,乳幼児期の急性期治療の善し悪しが本疾患に罹患した患児の一生の生活の質を決定すると言っても過言ではない.川崎病の急性期治療についてはガイドラインも上梓された.本特集では,急性期治療について現場の第一線で活躍している若手研究者に解説してもらった.従来は,血管造影による評価のみであったが,現在,MRIやCTといった非観血的な方法で評価が可能になっている.特にCTでは,低被曝による評価が可能になっている.また,一生続く病気として巨大冠動脈瘤の自然歴,動脈硬化病変への進行の可能性について,今手に入るデータをすべて使い,専門家に解説してもらった.しかし,本当の遠隔期はこれからであり,今後循環器内科医との協力の下,さらなる長期の経過観察が必要である.川崎病冠動脈病変のカテーテル治療と外科治療にはそれぞれ,循環器内科と心臓血管外科のエキスパートに解説していただいた.この分野は,ますます集学的な治療の必要性を増していくと思われる.現時点での川崎病の最先端の知識の集大成が本特集において完成した.本特集は,川崎病を実地診療する一般小児科医や研修医はもちろん,川崎病を専門とするエキスパートにも役に立つものに仕上がっている.成人となった川崎病児を診察する循環器内科医の方々にも役に立つものに仕上がっている.特に,成人移行がこれからの重要な問題である.本特集をきっかけに川崎病に興味を持つ循環器内科医が一人でも多くなることを願う.
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