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特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(idiopathic/heritable pulmonary arterial hypertension;I/HPAH)については,1973年に第1回WHO肺高血圧症国際会議が開催され,若年女性が罹患し,中間生存期間2.8年と極めて予後不良の疾患とされた.本症に対するエポプロステノール持続静注療法および経口肺血管拡張薬の発展に伴い,その予後の飛躍的な改善がみられる.特に初期併用療法が普及した日本の専門施設におけるI/HPAHの予後は3年生存率95.7%と極めて良好なことが報告されている.抗凝固療法のみでは予後不良とされてきた,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension;CTEPH)では,肺動脈内膜摘除術に加えて,日本においてその手技の改良によって普及したバルーン肺動脈拡張術(balloon pulmonary angioplasty;BPA)によって,非手術適応例の予後も改善した.一方,肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症(pulmonary veno-occlusive disease/pulmonary capillary hemangiomatosis;PVOD/PCH)の予後は今なお不良で,肺移植が唯一の確実な治療である.これらは,厚生労働省の指定難病とされており,PAH,CTEPHはともに3,000名を超える患者が登録されている.
2018年3月に日本循環器学会を主体とした肺高血圧症治療ガイドラインの改訂版が公表され,海外のエビデンスと日本の現状を踏まえた推奨が記載された.同年2月には,ニースで第6回の肺高血圧症国際会議が開催され,12月にそのまとめが公表された.ニース会議における大きな変更点は,第1回より用いられてきた肺高血圧症の定義(安静時平均肺動脈圧≧25mmHg以上)が,正常平均肺動脈圧は14mmHgで2SDを加えても20mmHgであることから,>20mmHgへと変更されたことである.さらに,PAHの遺伝子的素因,分子病態解明の進歩が報告され,リスク分類と治療指針が改訂された.左心疾患や呼吸器疾患に伴う肺高血圧症とPAHの鑑別,治療の現状について記載され,BPAの有効性が海外でも認められるようになった.
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