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原因が不明である拡張型心筋症を特発性拡張型心筋症というのに対し,基礎疾患ないし全身性の異常に続発し,拡張型心筋症に類似した病態を示す疾患を「二次性心筋症」または「特定心筋疾患」と称する.突発性拡張型心筋症の原因は不明であるが,実際はそのほとんどが遺伝子の変異による.筋ジストロフィー患者の心臓が拡張型心筋症に類似した病態を示すことから,その原因分子のジストロフィンに会合する分子であるサルコグリカン,ジストログリカン,さらにそれらに会合するアクチニン,アクチン,ラミンなどが突発性拡張型心筋症の原因遺伝子であることが明らかになってきた.ジストロフィン,サルコグリカン,ジストログリカンが細胞膜近傍に存在することから,膜の脆弱性によるカルシウム過剰流入が拡張型心筋症の発症機序であるという仮説が骨格筋とのアナロジーから想定されているが,心筋においても同じ機序で拡張型心筋症になるか否かは不明である.また,アクチンなどのサルコメアタンパクの異常から,収縮機能が低下する可能性が指摘されており,さらには核膜に存在するラミンの変異から,核内遺伝子発現の異常も拡張型心筋症の発症機序として想定されている.つまり遺伝子の異常により発症する特発性拡張型心筋症の発症機序も一つではなく,複数存在する可能性があり,どの機序においても詳細は未だ不明である.したがってその治療法としては,心保護といった一般的な心不全の治療法しかないのが現状である.
一方,二次性心筋症(特定心筋疾患)は,原因疾患が存在するという点が大きく異なる.その原因疾患の中には成長ホルモンや甲状腺ホルモンの異常による内分泌性のものやステロイドが著効するサルコイドーシス,酵素補充療法が可能なFabry病など多くの疾患がある.二次性心筋症(特定心筋疾患)の中には,原因を明らかにし,適切な治療をすることにより,心臓の収縮障害や拡大を防ぐことが可能であり,また改善も期待することができるものが存在する.したがって拡張型心筋症様の病態を示す患者を診たときには,まずは二次性心筋症(特定心筋疾患)の可能性を疑って,できる限り鑑別診断をすることが重要である.
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