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I.はじめに
大脳半球切除術cerebral hemispherectomyは当初,グリオーマが大脳半球に広範に浸潤した片麻痺患者に対し根治をめざして行われたものである(Fig.1A)8,23).一時は注目されたが合併症が多いうえ,結局は早期の腫瘍再発を免れないことがわかり1930-40年代にはかえりみられなくなった31).その後,てんかんをともなった乳幼児片麻痺患者の1例に応用されたが25),Krynauwが12例の経験をまとめて有用性を報告するにおよび21),てんかんの外科治療法として脚光を浴びるようになった.しかし,手術時間が長く,出血量が多いこと4),髄液吸収障害にもとづく水頭症を来たしやすいことに加え,術後4-20年の長期間を経て重篤でときに致死的な合併症である脳表ヘモジデリン沈着症superficial cerebral hemosi-derosisを高率に(25-35%)来たすことが明らかとなった22,31).その原因として半球切除後の大きな硬膜下腔への持続性の微量出血が指摘され27),これを防止するための工夫がなされてきた1,6,31,44).
その一つが前頭葉と頭頂身との一部および後頭葉を残して大脳半球中心部と側頭葉のみを切除し(subtotal hemispherectomy),残した脳は深部白質を吸引除去して機能的に離断する方法である(Fig.1B)31,38-40).本手術は神経連絡の面では大脳半球全体を離断したことになるため,機能的大脳半球切除術functional hemispherectomyと呼ばれ,大脳半球を実際に切除する解剖学的大脳半球切除術anatomical hemispherectomyと区別されている38,40),また大脳半球の皮質のみを切除し,脳室壁に沿った白質は温存する変法も報告されている(大脳半球皮質切除術hemidecorticationまたはhemidecorticectonly)5).いずれも,脳表ヘモジデリン沈着症の発生は少ないが5,31,40),なお手術侵襲が大きいことから,さらに脳切除範囲を減らし,かつ一側大脳半球皮質を線維連絡の面で完全に離断する術式が考案された.半球線維路遮断術hemispherical deafferentation32)あるいは大脳半球切截術cerebral hemispherotomy41)と呼ばれている(Fig.1C).これらも広い意味で機能的大脳半球切除の範疇にいれられている5,12,32,41).解剖学的および機能的大脳半球切除術およびその変法をFig.1およびTable1に示す.
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