Japanese
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連載 脳神経外科と分子生物学
脳血管障害の分子生物学
Neurosurgery and Molecular Biology : (series 11) Molecular Biology and Cerebrovascular Diseases
桐野 高明
1
Takaaki KIRINO
1
1東京大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, the University of Tokyo
キーワード:
molecular biology
,
gene therapy
,
apoptosis
,
genetics
,
vascular biology
Keyword:
molecular biology
,
gene therapy
,
apoptosis
,
genetics
,
vascular biology
pp.111-118
発行日 1999年2月10日
Published Date 1999/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901673
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I.はじめに
分子生物学的な研究方法は疾患の分子レベルでの解明にきわめて強力である.特にその疾患が単一遺伝子によるものであったり,ある蛋白分子によるものである場合に,すなわち少数の要素に還元できる場合に圧倒的な力を示してきた.また,分子生物学には恐るべき一般化の力がある.『細菌で見つかった現象は象でも起きる』と言われるように,重要な生物学的現象であれば,進化の早期から保存されていて生物一般に認められる場合が多い.分子生物学の分析と一般化の力のおかげで,それぞれの研究領域に特有の手法というものは無くなってしまったように思える.遺伝子操作技術の進歩により動物個体の遺伝子の一部を変化させたり消失させたりして,人工的な遺伝子疾患を作成することも可能となった.その結果,分子から細胞を越えて動物個体に至る全体に分子生物学的な手法が使えるようになったことも病態の研究にとって特筆するべきことであろう.このような技術は逆に病気のヒトに応用することも理論的には可能である.
脳血管障害のようにきわめて臨床的で複雑な病態においても,分子生物学的研究法による新しい知見が急速に蓄積されつつある.そしてrecom-binat human tissue plasminogen activator(t-PA)の成功のように分子生物学が無ければ存在し得なかった新しい治療法も現実に現れてきている.現状においては,まだ分子生物学は分析の学であり,脳血管障害の治療に実際に役に立つ成果は多くはないが,将来においては計り知れない利益を与えてくれるものと期待される.
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