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経上腕動脈選択的脳血管撮影法(経上腕法)は経大腿動脈選択的脳血管撮影法(経大腿法)に比べ大腿動脈の屈曲や蛇行,動脈硬化に左右されず外来患者対象でも施行可能であり採用する施設が増加しつつある1).特に60歳以上の高齢者では経大腿法は成功率が低いのに比べ経上腕法では90%近くの成功率が得られ1,2),DSA画像の向上により脳動脈瘤の造影も満足すべきレベルとなった.しかし従来の経上腕法では左椎骨動脈への挿入は困難で,左肘動脈よりカテーテルを挿入するかあるいは経大腿法で行うかのいずれかでなければ不可能であった.そこでわれわれは左椎骨動脈に対する右経上腕法による工夫を試みた.カテーテルはグライドキャスII(TerumoCorp,Tokyo)を改良したものを用い,屈曲部より先端までの距離を7.5cmと市販の同カテーテルより2.5 cm延長した(Fig.1).シースは4 French(Terumo Corp,Tokyo)を,ガイドワイヤーは0.032"アングル型150cm(Terumo Corp,Tokyo)を用いた。挿人方法は基本的には従来の経上腕法と同様で,右肘動脈に45French用シースを挿入しカテーテルをガイドワイヤーとともに上行させ腋窩動脈よりいったん心臓内まで挿入後先端を翻転,ひきもどして各脳血管の起始部にもってくる3).改良したカテーテルは心臓内での操作時に屈曲部が長いため心室壁にあたる場合があり不整脈の出現には注意を要する.現在まで6例試みいずれも良好な画像を得ている.代表例をFig.2に示す.カテーテル先端は左鎖骨下動脈より椎骨動脈に挿入されており左椎骨動脈が選択的に造影されている.高齢者に対する脳血管撮影の機会は多くなり動脈硬化のつよい症例は増加する傾向にある.また右椎骨動脈は一般に左椎骨動脈より細い場合が多く左椎骨動脈造影を必要とするケースにはしばしば遭遇する.その場合本法は新たに左肘動脈を穿刺することなく左椎骨動脈造影が可能である.
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