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第11回の本カンファランスは,1995年10月31日から11月3日までの4日間,San Franciscoの北東,車で約2時間のところにある良質wineの産地,Napaという小さな町で開かれた.会場と宿舎にはさらに人里離れたSilverado Country Club and Resortという広々としたゴルフ場のクラブハウスに付随した施設が充てられた.ここで4日間缶詰め状態となり,55題の口演発表と193題のポスター展示について,いつものこのカンファランスと同様,早朝から深夜に至るまで連日hot dis—cussionが繰り広げられた.因みに今回の全ての発表をclinical:experimentalに分けると,37%:63%であった.今回はセミオープンになったこともあり前回(1993年,NorwayのStalheim,約200名)よりも多く,世界各国から約280名が参加した.日本からは阿部教授(北大),永井教授(独協医大),田中教授(新潟大),松谷教授(埼玉医大),野村部長(国立がんセンター),山下教授(金沢大),生塩教授(熊本大),佐谷教授(熊本大),筆者と他に若手研究者を含めて約30名の参加があり,今回も若い方々の活躍が頼もしく感じられた.
さて,第1日目は午後から始まり,最初のセッション“Clinical Trials Review”では,先ず小児脳腫瘍に対する放射線・化学併用療法に関する検討がなされた.Dr. Packerら(George Washington大学)は小児脳に及ぼす放射線の影響を考慮して,髄芽腫の術後放射線照射量を全脳・全脊髄に2340cGyと低減してもCCNU,VCR,CPPDを併用すれば,3年後も80%以上の症例が再発もなく良好な経過であることを示し,注目された.しかし,診断の時点で既に髄膜播種が認められるhigh risk髄芽腫症例に対する最善のプロトコールについては,術前照射の意義を含めて明確な結論は出されなかった.いずれにしても,髄芽腫の術後治療における放射線の役割は依然として大きく,化学療法の併用による放射線照射量の低減についてのコンセンサスを得るにはもう少し時間がかかる印象であった.頭蓋内胚細胞性腫瘍に対する化学療法について,沢村博士ら(北大)は局所放射線照射とCDDP,VP-16を中心とする化学療法により,高いCR率(15症例のうち13例)を得たことから本化学療法の優れた奏効性を強調し,大きな注目を浴びた.続いて行われた成人脳腫瘍に対する治療では,生塩教授が本邦における悪性グリオーマに対する化学療法の現況を紹介するとともに,ACNUにIFN-βを併用すればanaplas-tic glioma患者の生存率が有意に改善されるなど,ACNUに関する長年の臨床治験を披露した.Dr. Yungら(MD Anderson Cancer Center)は悪性脳腫瘍の血管新生を阻止する因子(antiangiogenic agent)として,TNP-470とかThalidomideの有用性を示唆する発表を行った.さらにDr. Karim(Vrije大学)はlow grade gliomaに対する放射線治療の有効性の有無の検討から,照射量よりも手術での腫瘍切除量とか患者の年齢,performance statusなどが予後を推定する上で重要であることを示し,長時間の討論がなされた.
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