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Ⅰ.はじめに
1970年代後半に登場した15OガスPETによって,脳血管障害の領域では,脳虚血の病態が精力的に研究され,1980年代前半には脳虚血に対する血行再建治療の基盤となるさまざまな概念が確立した.すなわち,15OガスPETによる脳血流量(cerebral blood flow:CBF)と脳酸素代謝量(cerebral metabolic rate of oxygen:CMRO2),脳酸素摂取率(oxygen extraction fraction:OEF)および脳血液量(cerebral blood volume:CBV)の各指標の計測によって,脳虚血超急性期にみられる虚血性ペナンブラ(ischemic penumbra)2,10),脳梗塞急性期の再灌流に伴う贅沢灌流(luxury perfusion)1,14),慢性期にみられる貧困灌流(misery perfusion)4)などの概念がCBFとOEFを中心に整理され,脳虚血・脳梗塞の病態診断の基礎ができ上がった.そして,これらの概念は,1990年代の脳血流SPECT機器の普及によって,研究施設から一般診療施設へと受け継がれ,脳虚血の病態診断の中核的概念として普遍的に活用されるようになった.しかしながら,脳虚血に対する血流再開療法が進展しつつある現状においては,脳虚血に対する代償能の発動と治療介入の適切な時期の視点から,これらの概念を再考する必要がある.
一方,これまでの15OガスPETでは,CBFやCMRO2の画像再構成においてCBV画像による補正が必要であり,nidusや拡張した静脈などの血液プールを伴う脳血管奇形の病態診断では,血液プールがCBV画像で高集積となり,他の画像のartifactの原因となった.このため脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)に伴う盗血現象(arterial steal phenomenon)7)や硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)に伴うvenous engorgement31)などの病態解明は,必ずしも成功していない.しかし,最近になって,CBV画像による補正を必要としない15OガスPETの画像再構成法が登場し,巨大な血液プールを伴う脳血管奇形においても精度の高い病態診断が可能となりつつある.
そこで本稿では,最近の15OガスPETの測定法の進展を踏まえて,脳虚血の病態診断を再考するとともに,脳血管奇形の最新の病態診断について解説する.
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