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はじめに
読字過程(ここでは文字および文字列としての単語も含める)の神経機構に対するアプローチには,大きく分けて三つの流れがある。一つは,19世紀以来の,脳損傷者における欠落症状,すなわち失読を対象とした臨床神経心理学的な研究である。今日まで得られた知見によれば,中心溝より後方の領域で言語野以外に読字障害を生ずる部位として,後頭葉内側面(十脳梁膨大部),角回,側頭葉後下部が知られている。本邦で失語症に伴う読字,書字障害において一般に漢字のほうが仮名に比べて障害の程度が軽いということは,古くより指摘されてきたが,これらの部位の損傷による読字・書字障害においても漢字と仮名とで障害の程度に差のあることが明らかにされている。すなわち,後頭葉内側面(十脳梁膨大部)の損傷による純粋失読では,読みが漢字優位に障害される場合と仮名優位に障害される場合とがある11,50,54)。角回病変による失読失書では,仮名読みの障害が強いことがある31,50,55)。側頭葉後下部の損傷で漢字に比較的選択的な失読失書を生ずる17-19)。こうした事実に基づき,岩田は漢字,仮名の読字のメカニズムについて,漢字の読字には視覚野から左側頭葉後下部を経てWernicke野に至る腹側路が不可欠であり,仮名の読字には視覚野から左角回を経てWernicke野に至る背側路が使われるという仮説を提唱している17,18)。
Regional cerebral blood flow was measured during kanji or kana word reading with the intravenous H215O bolus injection technique by positron emission tomography. Reading aloud tasks of kana nonword, kana word and kanji word were given to five subjects each.
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