扉
卒前教育について
石川 進
1
1島根医科大学脳神経外科
pp.1121-1122
発行日 1979年12月10日
Published Date 1979/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201075
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大学の臨床医学講座のstaffには教育,研究,診療の3つの義務があることは周知の通りである.本来この3つはすべて同一の重みを持ち,どれひとつとしてゆるがせに出来るものではないが,現実には研究が最も重視され,多くの場合著書,論文の数によってその人の評価が決まってしまう傾向がある.従って研究・著作活動が極めて重要になるのは言うまでもないが,同時に脳神経外科医は手術に多大の時間とエネルギーを注ぎ込まなくてはならず,こうなると少数の超人を除き,卒前教育が相当負担になってくるのも無理からぬことである.3つの義務のそれぞれに費やす時間とエネルギーは,staffの職種,年齢によって相当異なってこようが,卒前教育に思う存分の時間とエネルギーをさき得る人が果してどれ程あるであろうか.
この4月に新設医大に赴任し,既に作られていたカリキュラムに従って4年生(6か年一貫教育の4年目で既設の大学の学部2年生に当たる.)に脳神経外科学全般を,しかもかなり少ない時間数で教えさせられるはめになった.前任地では長年の間卒前教育に当たってきたが,これらはいずれも臨床医学にかなり習熟した学部4年ないし3年を対象としたものであり,臨床医学は始めてという学生を前にして,少なからずとまどっているのがいつわらざる心境である.しかし付属病院開院のための雑用に追いまくられながらも,脳神経外科学の卒前教育はどうあるべきかを,真剣に考えてみるのにはよい機会であろう.
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