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はじめに
近年の結核罹患率の急速な低下を反映して,既に多くの結核病棟(病床)が縮小ないし閉鎖されてきている.こうした状況は大学の付属病院や,地域の基幹病院も同様で,今や大学付属病院で結核病床を有する施設は,80病院中22施設にすぎない.結核の診療は専門施設へ委ねる構図ができあがっている.結核患者の収容施設を持たない教育病院での臨床研修は事実上不可能であるにもかかわらず,卒前・卒直後の教育・研修の場である病院がこの様な状況では,近年の複雑化・多様化した疾患背景を有する結核患者の早期発見に支障を来すことは目に見えている.また,結核の感染対策は病院機能を維持する上での必須事項であるが,大学における結核に関する講義に費やされる時間は減少傾向にあり,十分な基礎教育が行われているとは言い難い.このような状況が,いわゆるdoctor�s delayあるいは重大な院内感染事故の一因になっていると考えられる.
文部科学省は1999年(平成11年)9月,厚生労働省の「結核緊急事態宣言」をうけて「医科大学(医学部)における結核に関する教育等の在り方にっいて」と題した通達1)を行ったが,その要旨は,1)結核の現状や対応の重要性を再認識させること,2)二段階ツベルクリン反応検査(ツ反)を実施し,学生自身の結核に対する免疫能を把握すること,3)結核病床での臨床実習を行うことなど,結核教育を感染対策の視点から再検討したものに他ならない.こうした通達を受けて,各大学が結核教育を再検討するなかで,抜本的な改革を要する課題も数多く存在する.
本稿では,全国大学付属病院の呼吸器・感染対策の担当医を対象として行ったアンケート調査(表1)を参考に,卒前および卒後の結核教育とその問題点,改善策について考察した.
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