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2008年9月10~13日の4日間の会期で,10th International Conference on Neural Transplantation and Repair(INTR10)がドイツ,フライブルグのコンサートホールにて開催されました.フライブルグはドイツ南西部に位置する有名な環境都市で,道路は美しいモザイク柄の石畳で覆われ,町の中には路面電車の線路と700年以上前に防災対策として作られた水路が巡らされています.街の中心に位置するゴシック建築の傑作であるミュンスター大聖堂をはじめ,歴史的な街並みが保存されています.INTRは3~4年に一度アメリカ,ヨーロッパ,アジアの各地域にある施設が順番に開催している神経移植・再生の重要な学会で,今回の会長はフライブルグ大学脳神経外科のGuido Nikkhah教授が務められ,200名のエキスパートが一堂に会しました.当科からは座長として招かれた伊達 勲教授と筆者のほか,日本から4人の大学院生がStudent Travel Awardをいただき,当時のユーロ高もなんのその,ドイツに行ってまいりました.ただ,残念ながら例年はお会いする日本からの参加者とはお会いすることができませんでした.
学会は5つの基調講演を含む38口演の合間にポスターセッション(75演題)が組み込まれる形で進行しました.発表1日目はパーキンソン病・アルツハイマー病に代表される神経変性疾患のセッション,2日目は遺伝子治療,脳梗塞のセッション,3日目は幹細胞,脊髄損傷のセッションがそれぞれ設けられました.Björklund先生をはじめ,欧米の高名な先生方の話を聞くことができて非常に勉強になりましたが,これまで移植再生治療をリードしてきた先生方が,今後臨床応用に向かう前にさらに基礎研究を積み重ねなくてはいけないことを強調されていたのが印象的でした.ヒトiPS細胞の樹立が報道され,中枢神経系疾患に対する細胞療法に期待が持たれていますが,超えなくてはならない高いハードルは多数あるということなのだと思われました.一方,パーキンソン病に対するアデノ随伴ウイルスを用いた3つの遺伝子治療臨床試験の現状だけでなく,昨年末から始まっているレンチウイルスを用いた臨床試験についても最新の知見が得られました.3人の患者に対してレンチウイルスが投与されていますが,6カ月後に副作用がなかったことと血液検体からウイルス遺伝子が検出されていないことが報告されました1).幹細胞についてはSnyder先生の,血管新生とともに生じてくる神経新生は末梢神経に誘導されやすいという新しい研究報告2)が非常に興味深かったです.
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