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1990年2月8日から11日まで米国フロリダ州のオーランドで初めての国際非放射性キセノンCT脳血流カンファレンスが開かれた.ピッツバーグ大学脳神経外科の助教授であるHaward Yonas先生が会長を務め,私供は日本の組織委員としてお世話させて頂いた.全体の参加者は130名ほどで,北米から約80名,西ドイツ,フランス,スイス,オーストリア,オランダ,デンマークの欧州から約20名,日本からは30名の参加があった.日本からの参加施設は脳神経外科が10施設と最も多く,神経内科2施設,神経放射線1施設であった.世界の主なCT製作会社が技術担当者を派遣しており発表していた.また関連機器会社,キセノンガス供給会社の参加もみられた.
学会は初夏を思わせるフロリダの気候の中,プールサイドでの屋外の歓迎パーティーで幕を開けた。ゲスト講演者にDr.Niels LassenとDr,Walter Obristを迎えDr.David Gur,Dr.Walter F.Good,Dr.Yonasなどピッッバーグ大学で活躍中の人達の講演があり,方法論,データ解析,臨床データ,問題点等に分けて一般演題70題が発表された.会場は広大なリゾート地に孤立してそびえる巨大なホテルであり,外に一歩でもでれば荘漠たる平原である.何処に行ける訳でもなく,毎朝早くから参加者殆んどの顔ぶれが会場に揃い熱気溢れる討論が続いた.日本からの発表は23題あり,内容の水準が高く,若い方の発表も非常に熱意のあるものであった.発表には血流,組織分配係数(λ)等の測定値の妥当性および正常値についての検討(Fatouros,Segawa,Takagi,Meyer),安全性についての検討(Kobayashi,Kashiwagi)等があり,引続き多くの臨床応用が発表された。特にCO2 response(Shinohara,Stringer),Aceta.zolamide challenge(Tanaka,Tarr,Dean,Yamashita),brain death(Pistoia),head injury(Marion),tumor(Hartman,Nakamura)等は,Xe/CT CBFの利点である,繰り返し検査が容易にできる点,緊急に対応できる点,λが測定できる点等を生かした発表であり,既に臨床的検査法として定着しつつある印象であった.しかしキセノン吸入時間,濃度,CT scanのSchedule等に関して統一性がなく,CBFの計算方法も多くはsaturationcurveを使う発表であったがsaturationとdesaturationcurve両者を使うもの(Nakano,Karasawa),desatura−tion curveのみを用いるもの(Schuier)と様々であった.これはS/N比が低く,組織内キセノン濃度を連続的にモニターできない点を補うための試行錯誤であろうと考えられた.Dr.Lassenからはλを測定することに固執する必要はないではないかとの発言があった.問題提起として,呼気モニターの精度の検討(Kobayashi,Suga),Xenon吸入中の脳圧や脳血流の変化の検討(Darby,Plougmann,Love,Marks),Motion artifactの処理法(Kalender)等が発表された.
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