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中国四川省での大震災が連日報じられている.この編集後記を書いている時点では,死者は10万人に達するであろうといわれる大災害である.瞬時にして命を奪われた多くの人々の冥福をお祈りする.テレビでは被害を受けた家屋や被災難民の様子,また倒壊した家屋からの救出場面や日本の救助隊,医療チームの様子などが克明に映し出されている.これらを見ていておやっと思うこともある.経済成長著しい中国は都市部と地方で貧富の差が大きく,それは日本の格差とは比較にならないほどといわれてきた.確かに日本を含め世界各地の観光地に中国人旅行者の姿があり,富裕層は日本の富裕層をはるかに凌駕している.反対に地方は,所得が低く出稼ぎが多く….しかし今回テレビに映し出された地方の様子は,外見上日本の地方の様子とそれほど変わらない.発電機から競って携帯電話の充電をする姿もある.建築方法がおざなりであったとはいえ倒壊した学校も日本の地方で見るそれと同様であった.四川省の中心都市成都は三国志時代の蜀の都であり,劉備や諸葛亮を祀った廟もあるという.現在人口1000万人を超える大都市で,大学病院も医療内容はともかく外見は立派であった.日本で“中国は都市部と地方の差が激しい”と10年1日のごとくとらえている間に,中国では地方でも着々とハード面が整備されつつある.
昨年,2010年開催の万博をひかえて活気にあふれる上海を訪れた際に,領事館の医務官と話をする機会があった.中国のエリート層についてだった.日本のマスコミに登場する中国一般の人たちが中国のすべてではないという.中国のいわゆるエリート層は10億人の中から選ばれた集団であって,マスコミにでることはほとんどないがその層は大変厚く優秀だという.かつての愛国教育を受けた年代が国を牽引するエリート集団を形成するころ,日本との関係はどうなるのか.いつぞやサッカーの試合で日本国旗が燃やされ,日本チームがブーイングをあびた重慶も成都の近く,四川省だったことを思い浮かべた.中国は実にさまざまな顔をもつ.
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