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編集後記
冨永 悌二
pp.862
発行日 2007年8月10日
Published Date 2007/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100606
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本誌には総説1編の他,2編の研究,5編の症例報告が掲載されています.いずれもが力作であり筆者の先生方に御礼申し上げます.
特に症例報告の「頸動脈ステント留置術後遅発性に生じたコレステロールクリスタル塞栓症の1例」は故あって大変感慨深く読ませていただきました.われわれも以前cholesterol crystal embolism(CCE)を経験しました.その症例は,アメリカ駐在中に軽い脳幹梗塞を発症し帰国後われわれの病院に治療のため入院,偶然無症候性高度頸動脈狭窄が発見され,われわれはそれに対してCEAを予定しました.脳血管撮影後,心臓のカテーテル検査を施行,その後腎機能が急速に悪化したため転院にて腎不全の治療につとめました.いったん自宅退院できたものの,最終的に心筋梗塞にて急逝されました.患者さんはわれわれの医局員のお父様であり,息子の勤務先を頼っての治療でありましたが,血管撮影を契機に結局不幸な転帰をとられました.当時われわれにはCCEの知識がなく,どうして急激な腎機能の悪化を来したのかすぐには理解できませんでした.かつて,その医局員との個人的な交友から,故人との黒鯛釣り等の思い出話を聞いていたこともあって慙愧の念に耐えず,今でもCCEという疾患にふれるたびに粛然とした思いがします.この報告の症例は幸い軽症ですみましたが,筆者らが述べているとおり,早期診断のためにまずこの疾患を疑うことが大切であり,読者がこの疾患を知って一人でも多くの患者さんがCCEから救われることを期待したいと思います.
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