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本号の扉では,新妻邦泰先生が「何をやるか,何をやらないか」の中で,上杉鷹山の「為せば成る」から利根川進先生の「何をやらないか」までの心境の変化を綴っている.情報が洪水のように溢れる現在,興味をもつことは多々あり,何をやらないかの選択は確かに大切かもしれない.また,臨床研究の中でも橋渡し研究の活性化についても述べられている.橋渡し研究は,伴走企業との研究開発事業であり,その事業構造の中で特に医師のインセンティブの低さが弱点だと思う.今後,さらに橋渡し研究が若手医師を惹きつけ持続的に活性化していくためには,医師のインセンティブがさまざまな形で得られていくこと,それが見える化されることが大切かもしれない.
「脳神経外科をとりまく医療・社会環境」では川原一郎先生らが,離島医療の経験からナースプラクティショナーの意義について現状と展望を述べている.昨今,働き方改革が喫緊の課題となっており,タスクシフティングのため特定看護師の育成が推奨され,多くの大学病院でも育成が開始されつつある.ただ,まだ数が少ない特定看護師の所属やガバナンスは施設によって異なり,今後,特定看護師数の増加に伴い,その立ち位置やキャリアパスが確立されていくと思われる.私事になるが,先日,スマートホスピタルとして高名なフィンランドのオウル大学病院を視察した.オウル大学病院はフィンランド北部の地域医療も担っている.ラップランドなどの医師少数地域での医療を訪ねたところ,当然のことのように,オンラインの遠隔医療によりナースプラクティショナーが医師の指示に従って医療を行っているとのことであった.全国民の医療情報は,一括して参照・利用できるプラットフォームが構築されている.このような合理的な医療システムが,わが国ではさまざまな理由により構築されない状況が誠に残念である.
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