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編集後記
冨永 悌二
pp.1180
発行日 2014年12月10日
Published Date 2014/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200059
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本号の『扉』には,宮古島で診療されている竹井太先生の「離島からのラブコール」が掲載されている.宮古島での「地にまみれながら」の医療の魅力が伝わってくるし,竹井先生の座右の銘である「生きて活きて逝ききる」という言葉も含蓄がある.言わずもがなであるがどこでも高齢者が増えて,確かに「逝ききる」意味を考えるべきというのは言い得て妙だと思う.
宮嶋雅一先生の「髄液の産生と吸収の再考」も大変読み応えのある総説になっている.髄液の産生と吸収,循環に関して歴史的報告を逐一踏まえながら,現在の考え方への変遷がわかりやすく説明されている.脳室およびくも膜下腔と脳実質間の水や物質の交通が比較的自由であり,「髄液も組織間液も両者は連続して,細胞外液を構成している」ことは,脳腫瘍治療のためのconvection-enhanced delivery(CED)を行っていると確かに実感として納得できる.脳内血腫のように血腫溶解に時間がかかり,周囲の脳組織が破壊されている状況では血腫の吸収にそれなりの日数がかかる.しかしCEDでは,周囲脳組織を破壊せず細胞外腔に“対流を起こす”ように持続陽圧で薬液や造影剤を注入するため,水溶性薬剤は思いのほか速やかに脳内からクリアランスされる.脳は実質臓器であり,細胞外腔のbulk flowを意識する機会は少ないが,細胞外液はやはり髄液や組織間液と容易に通じていると思われる.宮嶋先生のご努力に感謝したい.
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