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編集後記
冨永 悌二
pp.1046
発行日 2012年11月10日
Published Date 2012/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101877
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本号の扉で中村博彦先生が,「超高齢化社会における脳神経外科医」について書いておられる.興味深く拝読した.すでに地方は超高齢化社会の中にある.地方の関連病院では,入院患者の多くが70歳代,80歳代,90歳代であり,外来患者も60歳代であればとても若く感じるほどである.30年前,80歳以上でSAHの開頭手術をするのは論外であったと思う.80歳代のSAH患者など本当に珍しかったので,適応なしでも支障はなかった.現在,超高齢者に対する手術適応は“済し崩し”に広がっている.中村先生が指摘するように,社会環境も変化したし,高齢者自身も変化したかもしれない.若・壮年であれば,救命を大義に医療者も家族も迷いなく手術を考えるが,超高齢者のような適応の辺縁では,医療者・家族ともにさまざまな事情,思惑の入り込む余地があるのも事実である.
もう一度超高齢者の脳神経外科医療に正対すべきであると思う.非高齢者SAHの術後成績を見れば,通常術前重症度グレードの悪化に従って予後不良群は,階段を上るように増えてくる.しかし高齢者群では,はじめからもう1段高い階段を上るように,予後不良群が増えてくる.このはじめからの1段は,縮小の余地があるのか,あるいは高齢者とはそのようなものとして受け入れなければならないのか.いずれ通常の治療の対象の多くが高齢者・超高齢者となってくることを覚悟しなければならない.超高齢者をどこまで手術するかを再考してもよい時期にきていると思う.手前味噌になるが,来年3月に東京で開催される日本脳卒中の外科学会では,80歳代のSAHをどうするかをテーマにシンポジウムを組んだ.ご議論いただければ幸いである.
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