書評
『神経内視鏡手術アトラス』―石原正一郎・上川秀士・三木 保:編集
寺本 明
1
1日本医科大学大学院・脳神経外科
pp.466
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100564
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日本脳神経外科学会は1948年の創設であるので来年60周年を迎える(ただし,学会の開催数はもっと多い).数え年で言えば既に還暦を迎えているわけである.この間,学術的にも技術的にも,さらには政治的にも一貫して右肩上がりの発展を来し,時には既に完成形に近づいたかと思われる分野もあった.細かいことを言えばきりがないが,臨床的にはMicroscopeとCT scanおよびMRIが三大プロモーターであった.これらが安定してきた後で華々しく登場してきたのが神経血管内手術と神経内視鏡手術であり,中小の学会の中には統廃合がささやかれるものがあるなか,この2つの専門学会は会員数を飛躍的に伸ばしてきている.いずれも従来の治療法と比較するとより低侵襲であり,テクニックも精緻であるため,若手の脳神経外科医にとっては大変魅力的に見えるようである.
一般に外科分野においては,患者にとって低侵襲となればなるほど外科医の負担は増えてくる.もし同じ成果が挙がるなら切開や術野は小さいほどありがたい.しかし,その分新規の機器の導入やその習熟が外科医に要求されるわけである.この習熟過程をおろそかにすると,低侵襲どころか患者に健康被害を与えることになりかねない.現に,これらの新しい分野ではさまざまな医療事故が報告されている.脳神経血管内治療学会ではいち早く専門医制度を立ち上げたが,より新しい分野である神経内視鏡学会ではまず技術認定制度から始めることになった.そのテキストともいえるのが本書である.
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