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I.はじめに
ヒトの瞳孔は光量変化により,近見時に,覚醒しているか眠っているか,梅毒その他の疾患により,またさまざまな状態でその径が変わる。この瞳孔径変化が生体にどのような意味があるかは別にして,この瞳孔径決定に最も重要な要素はその神経支配である。瞳孔を作る虹彩には瞳孔括約筋M.sphincter pupillaeと散大筋M.dilator pupillaeがあり,これらの互いに拮抗する平滑筋の緊張の程度が瞳孔径を決定しているが,括約筋は動眼神経経由の副交感神経が支配し,他方の散大筋は頸部交感神経経由の交感神経が支配し,したがって瞳孔径はこの二者の均衡によって決定されていると考えられてきたし,さらに対光反射も決してこの例外ではないと理解されてきたが,今日の神経生理学的実験の結果からみると修正の必要があるといわざるをえない。今日,生体の反射機構が,あるいは生体のもつ調節機能が単一神経レベルで説明され,さらにその上に発展しているのに比べ,瞳孔運動の神経支配に関する単一神経レベルの研究は少ない。虹彩を支配する,すなわち瞳孔運動に関与し,基本となる神経単位の同定が不十分であると思われる。
瞳孔運動を決定する中枢神経からの情報は毛様体神経の遠心性インパルスとして伝達されている。したがって,本稿では今日までに得られた毛様体神経の研究結果を紹介し,同時にわれわれの最近の研究結果をもとに瞳孔運動の神経支配について述べる。
Abstract
It is the iris that changes the size of the pupil. The iris behaves as a diaphragm which retracts or expands depending upon the net result of the contractions of the sphincter and the dilator, two muscles opposing each other in function. It is generally recognized that the sphincter is inner-vated by the parasympathetic nerve via the oculomotor nerve and the dilator by the sympa-thetic nerve via the cervical sympathetic nerve.
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