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I.はじめに
われわれの遺伝子は,たえず外界からの脅威にさらされている。化学物質によるものであれ,放射線によるものであれ,あるいは,自然に起こるものであれ,DNAは常に損傷を受けているものと考えられる。それでいながら,遺伝子としての安定性を保ちえているのは,DNA修復機構が細胞内に存在するからである。遺伝子の傷が修復されえないものは死んでいき,たとえ修復されたとしても,修復の不完全なもののあるものは,突然変異と変異株(ミュータント)に対比されうる遺伝病(ヒトにおけるミュータント)や変異株がみつかり,しかも,それらの修復機構が,非常に似かよったものであることが明らかになるにつけ,進化的に大きな隔たりのある大腸菌からヒトを含む高等生物まで,多少の進化的差異はあるにせよ,共通の遺伝子修復機構をもちつづけていることがわかったことは,大きな驚きであった1〜7)。
他にも,このようなDNA修復欠損で癌を高率に発症していると思われる遺伝病がみつかっている。末梢血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia),Fanconi貧して固定され,それがひいては発癌につながるということが,最近明らかになってきた。たとえば,遺伝病の一つである色素性乾皮症は,日光中の紫外線を浴びて高率に皮膚癌を起こすことで知られているが,その原因は紫外線によるDNA損傷の修復能の欠損であることが解明されている。
Abstract
Ever since the identification of DNA as the genetic material, a maintaining the stability of DNA has been one of the basic problems to be solved in biology. Although DNA must have been exposed to various damaging agents in the environment such as radiations and chemicals for many years, definite traits of species appear to have persisted and been well conserved. Recent research clearly indicates that the stability of genetic information is mainly due to the capacity of living cells to repair the damages in DNA.
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