Japanese
English
特集 視覚の中枢機構
外側膝状体視覚系および膝状体外視覚系の生理学
Physiology of geniculo-striate and extrageniculate visual systems.
小川 哲朗
1
Tetsuro Ogawa
1
1秋田大学医学部第一生理学教室
1Department of Physiology, Akita University School of Medicine
pp.718-733
発行日 1983年10月10日
Published Date 1983/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905530
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I.はじめに
ヒトで大脳皮質視覚野(有線野)に傷害があった場合,傷害側と反対側の視野半分が盲になる(同名半盲症)。この場合,見えない半視野に光を与えると,瞳孔は縮小し,対光反射は正常に起こるし,また半盲視野内での大まかな視知覚,たとえば,光の点滅とか,物体の動きといったものを感ずる能力のあることが知られている12,61,127)。このような皮質視覚野の傷害後に残る視知覚は,視覚野の傷害が不完全なためと解する人もいたが,最近のサルやネコを使っての実験の結果,網膜—外側膝状体—視覚野の視覚系のほかに,上丘を経て,有線野周囲視覚皮質へ到達する経路が,有線野除去後の視知覚に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
今日,網膜を出た視神経線維が,従来考えられていた範囲よりもずっと広い範囲にわたって脳幹の諸核に投射していることが,解剖学的,生理学的研究によって明らかにされている。そこで,視覚系を系統発生的な面,機能的な面から外側膝状体を経由して有線野に及ぶ系と,外側膝状体を通らず,主に上丘を通り視床の後背側核を経由して有線野周辺の視覚皮質に及ぶものとの二つの系に分ける考えが提唱された99,121)。
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