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I.はじめに
がんらい筋肉の病気である筋ジストロフィー症において,赤血球の異常が注目されたのは,1967年Brownら1)が正常ではウアバインによって抑制される赤血球膜のNa++K+ATPaseが筋ジストロフィー症の赤血球膜では逆に活性が増加すると報告して以来と考えられる。筋ジストロフィー症の筋組織においても筋細胞膜の異常が注目されているが,生検筋からの細胞膜の調製は量的にも純度の上でも,とくに生化学的研究には困難が多い。それに対して,もし赤血球膜に異常があるなら種々の点で研究の対象としやすい。したがって,筋ジストロフィー症の赤血球については,この数年間に多数の研究報告があり,しかも種々の異なった(形態学的,物理化学的あるいは生化学的)異常が報告されている。
筋ジストロフィー症は遺伝の型,発病年齢,害されやすい筋の分布などが異なったいくつかの病気の総称であり,したがって病因(pathogenesis)もそれぞれ異なったものであると考えられる。ここでは,筋ジストロフィー症の中でも,臨床的にも診断が明確で,しかも研究の報告も多いDuchenne型筋ジストロフィー症(以下DMDと略す)の赤血球および赤血球膜の生化学的な研究についてまとめてみたいと思う。
Abstract
Biochemical, biophysical and morphological alterations of the erythrocyte membranes in the patients with Duchenne muscular dystrophy (DMD) have been reported. In this paper, literatures of biochemical studies of DMD eryth-rocytes are reviewed. The reported abnormalities included Na+K ATPase, Ca+Mg ATPase, pro-tein kinase, adenylate cyclase, permeability of cations, glycolysis, metabolism of adenine nucle-otides, and lipid composition. The most unussual abnormality in the reports may be the phenomenon that Na+K ATPase of DMD erythrocyte mem-branes was stimulated, not inhibited, by 10-4 M ouabain.
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