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はじめに
遺伝性の神経筋疾患を持つ突然変異マウスが1950年代から数多く報告されて,現在約180種が登録されている20,40)。これらの突然変異マウスのうち運動制御の重要な中枢の一つである小脳に病理組織学的異常が認められ運動障害が顕著なマウスが10数種知られている27)。これらはヒトの小脳変性症のモデルとして注目され症状発現の機序の解明や治療法の開発に大きな手掛りを与えるものと思われる。小脳では皮質内ニューロンの性質,ニューロン間結合の様式,入出力関係などが生理学的・形態学的に詳しく解明され7),生化学的解析も近年盛んに行なわれている。これら小脳異常を伴なう突然変異マウスは,このようにニューロン間結合がはっきりしている系で,ある種のニューロンの脱落またはニューロン間結合の異常が生じたとき,どのような機序でその症状が出現するかを調べて行くうえで貴重な材料となり,単にヒトの疾患のモデルとして臨床的意味があるのみでなく,生理学的・理論的に小脳を介する運動制御の機構を考えるうえで重要な材料となる。
本稿で紹介されるrolling mouse Nagoyaでは,特定のニューロン種の脱落などの病理組織学的所見がなく,中枢神経系内のノルアドレナリン線維系の異常および小脳皮質内ニューロンの数の減少が報告されているにすぎない。
Abstract
The rolling mouse Nagoya (RMN) is a mutant mouse characterized by severe gait disturbances. The symptom is suggested to be of cerebellar origin and RMN is regarded as an animal model of human cerebellar degeneration diseases.
A mutant mouse with gait disturbances was found in 1969 by Oda in a course of mating experiments between S III and C57BL/6JNga, and reported in 1973. This mouse was designated as the rolling mouse Nagoya. Genetic studies revealed that abnormalities in RMNs are deter-mined by a single autosomal recessive gene (rol) on the eighth chromosome.
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