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I.はじめに
細胞遺伝学や分子放射線生物学の急速な進歩によって,遺伝疾患をもつヒトの細胞について,染色体異常の発現機構8,17,18,26,32,48,62,89)や,損傷DNA分子の修復複製機構12,13,24,43,54,63,71,85,86,93)に関する研究が進められてきている。その中にあって,最近とくに注目されている疾患にataxia-telangiectasiaがある。この疾患はSyllaba & Henner(1926)83)によりはじめて臨床報告がなされ,次いでLouis-Bar46)による母斑症の一型とみなされた報告以来,Louis-Bar症候群として,また5番目の母斑症としてよく知られるにいたった。この疾患は乳幼児期より発現する進行性の小脳失調と球結膜や皮膚の末梢血管拡張症を主徴とすることから,Boder & Sedgwick(1958)9)によりataxia-telangiectasia(以下A-T)と命名された。その後,本症に顕著な易感染性11)とIgA67,99)やIgE2,68)の欠損のあること,常染色体劣性遺伝疾患84)で,胸腺リンパ系の低形成と細胞性免疫の欠損のあることが明らかにされるとともに,悪性腫瘍が高頻度に合併すること42,67,74)が注目されてきた。
The up-to-date knowledge on ataxia-telangiectasia (A-T) was summarized through reviewing the main literature on A-T and from the author's experience of pathological examination of 6 A-T cases.
The histopathological findings of immune organs and the cellular and humoral immune abnormality including an autoimmune phenomenon in A-T were described.
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