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特集 遺伝マウス・ラット
総説
Rolling mouse Nagoyaおよび小脳異常を伴うミュータントマウス
Rolling mouse Nagoya and mutant mice with cerebellar disorder
大野 忠雄
1
Tadao Ohno
1
1筑波大学基礎医学系生理
pp.372-378
発行日 1976年10月15日
Published Date 1976/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903145
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はじめに
遺伝性神経筋疾患を有するミュータントマウスは多数報告され,小脳症状(運動失調,平衡障害,振戦,筋緊張低下など)と小脳に病理組織学的所見(小脳皮質ニューロンの形態異常ニューロン数の減少ないし欠損,皮質層状構造の混乱,シナプス結合の異常など)の見出されたものが十数種類ある33,58,60)。これまでの小脳異常を伴うマウスを用いた研究は遺伝学的形態学的なものが大部分で,小脳の病理組織学的な記載およびその組織発生学的な基礎は整理されてきた。しかし,病理組織学的所見と症状の間を結ぶ,生理学的生化学的検索は非常に少ない。正常な動物における小脳の各ニューロンの性質とニューロン間のシナプス結合の様式は解明されている11)ので,この方面の研究が推進されれば,これらのマウスはヒトの小脳変性症のモデルとして症状発現機構の解明や治療法の開発に役立つのみでなく,小脳の機能自体を解明する有力な手掛りとなるであろう。
本稿では主として,日本で発見された小脳症状を伴うミュータントマウスであるRolling mouse Nagoyaについて報告されている知見をまとめ,今後の問題点を検討する。さらに小脳に病理学的所見のある他のミュータントマウスの数例について簡単に解説する。
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