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生体はエネルギーを消費した時,空腹感を感じて食物を摂取し,満腹感を感じた時に食物摂取をやめる。摂食調節により,エネルギーの収支のバランスを保っており,このバランスが崩れた時,肥満になったり痩せたりする。1942年,HetheringtonとRansonは,視床下部がこの摂食調節に重要な役割を担っていることを示した1)。彼らは視床下部腹内側核を破壊したラットは過食となり,肥満になることを見出した。1951年には,AnandとBrobeckが, 視床下部外側野の両側破壊によりラットは無食となり,痩せることを示した2)。これらのことから,視床下部腹内側核が満腹中枢,視床下部外側野が摂食中枢と考えられるようになった。さらに,1958年にHerveyが,視床下部腹内側核を破壊したために肥満になったラットと正常ラットの血管を吻合することによって血流が交互に循環するようにしたパラバイオーシスの実験を行ったところ,正常ラットは飢餓のために死亡した3)。この頃から,満腹シグナルを伝える因子が血中に存在すると考えられはじめたが,その存在をより強く示唆したのは1969年のColemanのob/obマウスとdb/dbマウスを用いたパラバイオーシスの実験である4)。ob/obマウスとdb/dbマウスはともに単一の遺伝子変異によって肥満となるマウスで,彼はこの実験からob遺伝子が満腹シグナルを伝える因子を,db遺伝子がそのレセプターをコードしていると推測した。しかしながら,1994年にその因子がクローニングされ,レプチンと命名されるまで20年以上の歳月を要することとなる。
本稿ではレプチンによる摂食調節を簡単に説明した後,絶食がレプチンを共通経路として視床下部での遺伝子発現におよぼす影響について概説する。さらに,視床下部での遺伝子発現調節でレプチンを介さない経路についても述べる。
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