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特集 脳のシンポジウム
主題:加齢と脳
神経病理学の立場からみた中枢神経系の加齢と老化現象
The Aging and Senilty Processes of the Central Nervous System from the Neuropathological Viewpoint
白木 博次
1
Hirotsugu Shiraki
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1Department of Neuropathology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.607-626
発行日 1967年10月25日
Published Date 1967/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431906431
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I.はじめに
1965年チューリッヒの国際神経病理学会で,西南太平洋の島々に住む原住民,geographic isolatesに多発する数種の変性疾患についてのシンポジウムを,筆者が司会したとき,とくにとりあげたのは,Guam島のアミトロ(ALS)とParkinsonism-Dementia-Complex(P-D-C)ならびにNew GuineaのKuru病であつた1)。それ以前,またその機会に,それらの疾患の標本を筆者自身が検索し,その所見を,日本人の各種変性症の剖検例,また年配者の中枢神経系の対照例などと比較してみる機会があつた。
その結果,すくなくとも,それらの資料に関するかぎり,変性疾患そのものの病因を考える場合に,脳の加齢または老化の問題を度外視しては,どう考えても,片手落ちになるのではないかという印象がしだいに深まつてきた1)。この印象から出発して,幼若者の精神薄弱特殊型や,有機水銀中毒症の脳病変をみてゆくと,そこにも,従来,いわゆる初老期や老年期の脳病変と称されてきたいくつかの所見が,かならずしも,偶然ではない形をとつて,合併している事実をみいだすことができる。
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