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特集 脳研究の進歩—東京大学脳研究所創立30周年記念
Hallervorden-Spatz病の病因論—系統変性症と早発老化の立場からみたその神経病理学
Pathogenesis of Hallervorden-Spatz Disease: Its Neuropathology from Viewpoint of Systemic Degenerative Disorder and Precocious Senility
白木 博次
1
Hirotsugu Shiraki
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1Dept. of Neuropathology, Institute of Brain Research, School of Med., Univ. of Tokyo
pp.389-413
発行日 1968年8月25日
Published Date 1968/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904517
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I.はじめに
1922年,HallervordenとSpatz1)によりまとめられた報告にはじまるHallervordcn-Spatz病(以下H-S-Dと略称)の剖検例は,世界的にみても,決して数多いものとはいえない。一方,わが国では,1966年になつて,柳沢,白木ら2)3)により,はじめてその同胞の2剖検例が報告され,ついで同年,秩父ら4),また1968年の第9回神経病理学会では,高嶋ら5),皆川ら6)の報告が,相ついで発表されるようになつた。
H-S-Dは10歳前後の小児に好発,10〜20年にわたる慢性経過中,四肢の筋強剛や,各種の不随意運動とともに,進行性の知能低下をともない,同胞間の発病がまれでなく,病巣の主座は,淡蒼球と黒質網様層にあるとされてきた。ところで著者7)8)がすでに指摘しているように,Guam島のChamorro族のParkinsonism-Dementia-Complex(以下P-D-Cと略称)の2剖検例をみると,その基底核の病理所見に関するかぎり,H-S-Dのそれに酷似している。ところで後2者の発病年齢は,それぞれ20歳代,50歳代であるが,H-S-Dは,従来小児を中心とする若年者の疾患と考えられ,晩発例でも,20歳をこえるものはきわめてすくないといつてよい。
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