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特集 脳血管性障害・I
脳血管の構築学的特性—病理学的見地から
Nosologic Significance of the Cerebral Angioarchitecture.: A Panoramic Remark
向井 紀二
1,2,3
Noritsugu Mukai
1,2,3
1東京大学医学部病理学教室
2日本医科大学
3東京都監察医務院
1Dep. Pathology, Tokyo University, School of Med
2Neuropathology Section, Nihon Med. College
3Tokyo Metropolitan Medical Examiner's Office
pp.290-316
発行日 1961年5月25日
Published Date 1961/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903915
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I.まえがき
脳血管構築の特異性は,臓器としての脳の著るしい特異性に結びついて,単なる構成上の問題ばかりでなく,代謝や機能との相関においてきわめて重要であることは,最近の著るしい研究段階の進歩によつてますます明らかとなり,かなり細かい部分にまで論議がかわされるようになつた。
たとえば,脳以外の臓器で類同性をもとめがたい血液脳関門についてみても,毛細血管レベルに局在するこれらの関門でもつとも特異的な機能を営むものはAstrogliaであり,Cajal,Hortega以来詳細に観察され記載されてきた個有の血管に足をおいた形態は今日まで高度に分化した研究領域—組織培養,電子顕微鏡あるいは放射性同位元素による追跡等によつてはるかに能動的な形態の意味づけを念頭においてみることができるようになつた。一方,合成樹脂による鋳型標本の導入が,ゼラチン色素注入と連続切片という一方的な方法にとつて替り,粗大な立体構造はもとより,血流力学的な老えの最も基本的事項である脳の各領野を潅流する血管樹の形態として手にとるように明るみに押出されるにいたつて,それぞれの潅流様式の意味する機能とのつながりが循環動態とともに一層鮮明な意義を示すことも解つた。
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