特集 神経学における最近の研究
<病理>
筋原性疾患について病理的見地から
周 烒明
1
1Neuropathology Laboratory, West Virginia University Medical Center
pp.775-778
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904928
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最近筋ジストロフィー症に関して,赤血球膜における生化学的および形態学的な異常や筋線維膜の部分的欠損が電顕的に報告され,以来この疾患についての研究は膜機能異常説をめぐって展開されている。これは筋原性変化の特徴的な臨床症状の一つで,信頼のおける診断基準である,血清中の肉漿酵素,特にCPK(クレアチンカイネース)活性の上昇1)を説明すべく,また本症の病理機序の理解に重要な研究と思われる。デュシャンヌ型筋ジストロフィー症においては血清中のCPKやその他の肉漿酵素は,病初期あるいは筋力低下等の臨床症状出現前にすでに上昇している2)。そこで肉漿酵素の漏出は,筋鞘膜あるいは筋小胞体膜(Sarcoplasmic Reticulum以下SRと略)の透過性亢進から起るのではないかということが容易に推測される。1955年初期,江橋ら3)によって,骨格筋弛緩因子として発見されたCa賦活性ATPase等膜依存性の活性異常は筋ジストロフィー症患者においてすでに報告されている4)し,同症における変化した形のCa結合やCa結合能の変化についても報告されている5,6)。またトリの遺伝的筋ジストロフィーにおいて,SRによるCaの輸送能はCa-ATPase活性と同様に減少しているという7)。これらのすべての研究結果は筋原性疾患の筋鞘やSR酵素機構の異常を示してはいるが,膜機構を通して肉漿酵素が漏出するという結論を導くまでには至らない。
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