重症心身障害の病理—乳児期に罹患した日本脳炎後遺症の1剖検例

An autopsy case of Postencephalitis Japonica affected at infant on 4th month

I．はじめに

　今日まで日本脳炎に関する報告は，きわめて尨大な数に達し，その領域も疫学・臨床病理学的症候をはじめ神経病理学にいたる広汎なもので，枚挙にいとまがない。ことに急性期症状にひきつづくその予後について，後藤^1）の生存例の長期予後の精神神経学的研究は，精神神経学的症状の推移を動的にとらえ，白木ら^13-b）は日本脳炎の急性期はもとより，亜急性期，遷延期，慢性期において系統的に神経病理学的背景を詳述されるに及び日本脳炎の全貌がほぼ明らかとなったといえる。

　また近年，重度の精神薄弱と重度の肢体不自山の合併した"いわゆる重症心身障害"なる社会的通念が登場したが，症状の合併による便宜的用語であるため，その医学的位置づけはきわめて多彩・多様なものであり，わずか室伏ら^9）によって，その医学的背景をクローズアップし，系統的に述べられているに過ぎない。