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特集 脳のシンポジウム
主題—脳死をめぐつて
脳死の組織像について
Histopathology of Brain Death
小宅 洋
1
Yo Oyake
1
1新潟大学脳研究所神経病理
1Dept. of Neuropathology, Brain Research Institute, Niigata University
pp.82-87
発行日 1970年4月25日
Published Date 1970/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903104
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今回のシンポジウムで私に与えられた課題は,いわゆる脳死に何か形態学的な基盤が存在するか,もしあるとすればどのような変化かということになると思います。私は近寅彦君ら1〜7)とともに,脳の組織病変が近代医学の進歩によつてどのように変貌したかという主題を追求してまいりましたが,それらの成績が脳死の問題に結びついてきたことを,望外の喜びとするものであります。
脳死という言葉はもともと脳障害によつて起つた全身死,すなわち心臓死とか肺臓死とかに対立する概念でありましたが,ここでは神経機能が不可逆的に廃絶した状態,平たくいえば死んだ脳とか,死につつある脳とかいつた意味で用いられております。もちろん脳死が起れば不可避的に早晩全身死が将来されるわけでありますが,近代医学の進歩,たとえば人工呼吸の適用によつて,両者間の解離という現象(解離死dissociated death Kramer8,9))が出現し,脳死という状態がはつきりと浮び上つてきた次第であります。
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