Japanese
English
症例
遷延性経過(4日〜7日)を示した疫痢脳髄の3剖検例
The Histopathology of the Central Nervous System Lesions of "Ekiri" With a Protracted Clinical Course: A Report of Three Cases
白木 博次
1,3
,
丸木 淸美
2,3
H. Shiraki
1,3
,
K. Maruki
2,3
1東京大学
2埼玉県毛呂病院
3東京大学医学部脳研究所病理部
3The Division of Neuropathology, The Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.463-479
発行日 1960年1月1日
Published Date 1960/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901751
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1.まえがき
後天性の精神薄弱,テンカンまた脳性麻痺などが,小児期に,はげしい脳症をきたすような諸疾患にかかることによつてひきおこされることは,精神神経医学のよく経験するところである。ところで疫痢疾患が後者の代表例の1つとなるかどうかは,現在のところなお充分明らかにされていないとはいえ,詳細な研究対象に充分価することは臨床経験のよく教えるところである。疫痢脳髄の病理組織学については,白木ら1),諏訪2),3),丸木6)の最近の文献成果をあげることができるが,それらの資料の多くのものけ,48時間以内に死亡した最急性期のものに属している。一方,小児期に疫痢もしくは疫痢よう疾患の既往歴をもち,それに密接に関連して精神神経障害を発展し,10数年後に死亡した慢性期の脳病変の成果(石崎4)白木ら5))もあげられる。
しかし自明のように,両者は時期的にみて,あまりにも相へだたるところが多く,したがつて両者の中間期に相当する資料の検討が当然のぞまれることになるであろう。ところで抗生物質の出現は,このことを可能にさせるようになつた。ここに報告する例の疫痢脳は,いずれもクロラムフェニコール(クロロマイセチン)が使用されたため,4日から7日間にわたつて生きのびることができたものである。
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