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特集 興味ある症例の臨床と病理
疫痢様症状の既往歴をもつ葉性硬化の3剖検例
The Histopathology of Lobar Sclerosis with a History of "Ekiri-Like" Syndrome: A Report of Three Cases
白木 博次
1
,
丸木 淸美
1
H. Shiraki
1
,
K. Maruki
1
1東京大学脳研究所病理部
1The Division of Neuropathology, The Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.746-769
発行日 1960年8月5日
Published Date 1960/8/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901795
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I.まえがき
小葉性もしくは葉性硬化,また半球萎縮脳などが,出産障害また小児期の感染症その他の原因によつて,はげしい脳症をきたすことにその遠因があり,臨床的には,脳性麻痺,テンカン,精神薄弱などの形であらわれることはよく知られている。しかしこれら慢性期に属する脳病変の成因を考察するにあたつては,急性期から中間期をへて慢性期に移行する,一連の系列に帰属できる充分な資料について,これらを縦断的にながめ,相互に比較検討するのでなくてはその正確さを期待することはできない。しかもその場合,すくなくとも一つの原因(etiological factor)にもとづく各期の資料をその対象にえらべば,病因(pathogenesis)過程の解析は,一層簡単なものとなろうし,より純粋なよみをとることもできるであろう。しかしこのようなひろく,かつ系統的な視野にたつた業績に接する機会を,われわれは過去の内外の文献において,ほとんどもつことがなかつた。
この関係における好資料として,わが国に多数みいだされる疫痢もしくは疫痢よう疾患があげられる。前者においては,小児期における赤痢菌感染という単一原因によつて,重篤かつ急性の脳症がひきおこされ,またその後遺症の有無が問題となる。ここに報告する葉性硬化の3剖検例はその既往に疫痢よう疾患をもつている。
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