Japanese
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特集 興味ある症例の臨床と病理
疫痢様疾患(いわゆる自家中毒症の3例をふくむ)の脳病理組織学
The Histopathology of the Central Nervous System Lesions of "Ekiri-Like" Disorders: A Report of Six Cases
白木 博次
1
,
丸木 清美
1
H. Shiraki
1
,
K. Maruki
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1The Division of Neuropathology. The Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.725-745
発行日 1960年8月5日
Published Date 1960/8/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901794
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I.まえがき
疫痢は実際的にいつて,どのような臨床像を意味するものかの点については,学者によつて多少ともちがいがあるようである。ここで高津1)の解釈にしたがうと,疫痢は中毒性赤痢(Toxic Dysentery)であり,後述するように,そこには赤痢菌の感染とそれに関連した中毒症状の本質とをかねそなえたものがあるという。丸木3)はこの解釈の上にたち,臨床的にみてかなり厳密な意味で,19例の真性疫痢を,かつて白木ら2)が報告した資料のなかからえらびだし,その脳病理組織学を補遺的に論じた。3)ここに1群として一括報告する例の臨床像は,1,2の重要な診断規準の点で,真性疫痢とするのにためらいを感ずるものであるが,脳病理組織学的には,真性疫痢のそれとどのような関係にあるかを知るのが,この論文の第1の目的である。つぎにII群に属する3例の臨床像は,それ自休真性疫痢に酷似しているが,軽度の下痢はあつても,腸管に病変はみられず,くわえてとくに脳症や嘔吐がはげしかつた。このことは,疫痢は本質的には赤痢感染を前提とし,それによつて,大腸炎が必発のものであるとすれば,当然その枠外のものとなるであろうし,後述するようにこのものはいわゆる自家中毒症のカテゴリーに入れるのがもつとも正しいように思われる。この論文の第2の目的は,これらの脳病理組織学の本質をしることであり,さらにこのものを真性疫痢の脳病理組織学と比較考察するところにある。
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