特集 肝脳疾患・Ⅰ
肝循環から見た肝脳疾患
上田 英雄
1
,
常岡 健二
1
,
繁田 信
1
,
野村 益世
1
1東京大学上田内科
pp.267-276
発行日 1959年1月20日
Published Date 1959/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901672
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緒言
脳と肝臓とは密接な機能的関係を有し,肝疾患時にはしばしば脳神経症状並びに脳神経組織の形態学的変化をおこす。また肝レンズ核変性症の如く両者のどちらが一次的であるかの区別が現在尚不可能であり,しかも両者に特有な病理学的所見を有する疾患も存在する。これら脳と肝臓との両臓器間の親和性を示す疾患は数多く存在するので,肝と脳とが障害されしかも両者の機能的相関の認められる総ての疾患を総称して肝脳疾患と名づけ一括している。しかし此等肝脳疾患に含まれる疾患が各々同一系統に属するものであるか否か,またその疾患の肝と脳の相互関係及びその発生の原因については殆んど確定されていない。
一方Bradley1)が1945年人体において静脈カテテール法を利用しB.S.Pクリアランス法による肝血流量測定以来数多くの肝循環動態についての研究がなされて2)〜11),正常肝及び病的肝の肝循環動態が次第に明らかにされてきた。しかしながら肝障害が重症で脳神経症状があらわれているような状態ではその測定が実際上困難又は不可能なため知見は得られていない。また肝脳疾患を系統的に肝循環について測定した成績も見あたらない。そこで臨床的立場から最近肝性昏睡の一因子として重視されて来た含窒素物質代謝と異常門脈静脈短絡(肝内Eck)とを中心として,肝循環の面から肝脳疾患群を考察してみよう。
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