Japanese
English
脳の生理に関するシンポジウム 化学的現象を中心に
慢性刺戟に対する脳組織の化学的反応
The Effect of chronic Stress on Enzymatic Patterns in Brain Tissue
臺 弘
1
H. Utena
1
1都立松沢病院化学室
1Biochemical Laboratory, Matsuzawa Mental Hospital
pp.141-150
発行日 1957年4月1日
Published Date 1957/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901581
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1.まえおき
塚田さんが,割に明確に規定される脳髄の機能的変化の際の物質変化について話された後で,私が臨床の側から,又甚だあいまいな精神異常に関連した脳の化学的変化を話すことになりました。私の話の中にも人格変化というような把え難い言葉が出て来まして,基礎の皆さんにやりきれない思いをさせることがあろうかと存じます。これは精神異常を問題にする時にはどうも止むを得ないことでして,精神医学というものの対象がそうさせるのです。
一般に精神病医は脳の生理や生化学をあまり知らなくても,結構暮して行けます。意識障害や,痙攣の問題のように生理化学の立場から比較的入りやすい異常は,精神病医の臨床にとつては寧ろ小部分でして,精神の発達,適応,調節,の障害と云うような広い面が主な関心の対象となります。私共は主として心理的な方法で精神異常をとり扱い,又経験的に見出された身体的治療法,例えば電気ショックとか,インスリンショックとかいうようなものを,理由もわからずに行つて不満足な成果しかあげていないような現状です。私は精神異常の研究が生理化学と無縁な現状を,我々にとつて非常に残念なことであるばかりでなく,何よりも我々の患者にとつて不幸なことだと思います。ここにお話する内容は,かような溝を少しつつでも埋めて行き,精神病医と基礎学者とが共通の言葉で語り合える場を作りたいという努力の一つであります。
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